蕎麦について

なぜ、そば粉のフレンチクルーラーは幻のお菓子になったのか。

7月 7, 2026

「現在、SOBOKUNI 学芸大学店で販売している商品の中でも、最も早く売り切れる商品のひとつが、そば粉のフレンチクルーラーです。一日に作れる数は限られ、現在も安定して作れるスタッフは一人しかいません。そのため、お客様から『今日はありますか?』とお問い合わせをいただくことも少なくありません。」

ただ、実は最初からフレンチクルーラーを作ろうと思っていたわけではありません。もともと私たちが作りたかったのは、そば粉のシュークリームでした。

シフォンケーキもできた。レモンケーキもできた。ガトーショコラもできた。だったらシュークリームもできるかもしれない。そんな発想から始まった挑戦が、現在のフレンチクルーラーへと繋がっています。

この記事では、なぜ私たちがそば粉でシュークリームを作ろうと思ったのか。そして、なぜ最終的にフレンチクルーラーという形にたどり着いたのかをご紹介したいと思います。

実は、ずっとシュークリームを作りたいと思っていました

私たちは以前から、そば粉でシュークリームを作れないだろうかと考えていました。シフォンケーキもできた。レモンケーキもできた。ガトーショコラもできた。だったら、シュークリームだってできるのではないか。そんな単純な発想から始まった挑戦でした。

そば粉は、お菓子作りに向いている素材とは言えません。グルテンがありません。生地を支える力もありません。しかも毎年味が違います。収穫年が変われば風味も変わる。水分量も変わる。挽き方によっても変わる。挽いてからの日数でも変わる。そもそも「いつでも同じものが作れる素材」ではありません。

それでも、私たちはずっと可能性を感じていました。シフォンケーキを作ることができた。レモンケーキも形にできた。ガトーショコラも完成した。だったら、シュークリームだっていつか作れるかもしれない。そう思って試作を繰り返していました。

シュークリームは、想像以上に難しいお菓子でした

シュー生地は、生地の中の水分が蒸気になることで膨らみます。そして、その膨らむ力を利用して中に空洞を作ります。しかし、そば粉には小麦粉のような骨格がありません。膨らむことはできても、その形を維持することが難しいのです。

膨らまない。膨らんでも潰れる。途中でしぼむ。空洞ができない。中が詰まる。重たい食感になる。焼き色だけついて中が生焼けになる。逆に乾燥しすぎてしまう。同じレシピで作っているはずなのに、昨日は成功したのに今日は失敗する。そんなことが何度も起きました。

それでも、どこか可能性を感じていました。あと少しで何かが見える気がする。そば粉は、まだ違う答えを持っている気がする。そんな感覚だけは消えませんでした。

偶然見つけたのは、シュークリームではなくフレンチクルーラーでした

そんな試作を続けていたある時、私たちはこれまでとは全く違う方法を試してみることにしました。

一般的なフレンチクルーラーは油で揚げて作ります。でも私たちは、オーブンで焼いてみたのです。

すると、それまで見えていなかった表情が突然現れました。外側はざくっと香ばしい。噛むとサクサクとしている。それでいて中はじわっとしている。軽いのに軽すぎない。揚げていないのに、まるで揚げ菓子を食べているような満足感がある。

その瞬間に思いました。

これはシュークリームではない。

むしろ、フレンチクルーラーとして作った方が、もっと面白いかもしれない。

そうして、そば粉のフレンチクルーラー作りが始まりました。

オーブンで焼けば解決したわけではありません

ここで誤解してほしくないのは、「焼いたらうまくいった」という話ではないということです。むしろ、ここからが本当のスタートでした。

そば粉のフレンチクルーラーは、現在販売している商品の中でも最も難しい商品のひとつだと思っています。

オーブンの温度。焼成時間。材料の水分量。生地の硬さ。混ぜ方。絞る量。生地を寝かせる時間。ほんの少し条件が変わるだけで、全く膨らまなくなります。

サクサク感がなくなる。中が詰まる。焼き縮みする。ざくっとした食感が出ない。同じように作っているつもりなのに結果だけが違う。そんなことが何度も起きました。

シュークリームの試作よりも難しいかもしれない。そう思うこともあります。それくらい繊細なお菓子です。

現在も、一人しか作ることができません。

※そば粉のフレンチクルーラーが膨らんでいくまでの様子。少しでも間違うと一切膨らまない「奇跡」のフレンチクルーラーです。

実際、現在SOBOKUNIのスタッフの中でも、このフレンチクルーラーを安定して作れるのは一人だけです。

レシピはあります。工程もあります。同じ材料を使っています。同じオーブンを使っています。それでも、なぜか同じようにはできません。

その日のそば粉の状態なのか。湿度なのか。生地の見極めなのか。混ぜる感覚なのか。経験なのか。私たち自身も、まだ答えは見つけられていません。

オーブンの中では、生地がゆっくりと持ち上がり、少しずつ膨らみ、表面が乾きながら形が固定されていきます。その瞬間を見ていると、本当に不思議なお菓子だと感じます。

成功した時は、外側はざくっと香ばしく、中はじわっとした食感になります。でも、少し条件が変わるだけで全く違う仕上がりになってしまう。だからこそ、そば粉はレシピ通りに作れば必ず成功する素材ではないのだと思っています。

でも、それがそば粉の面白さでもあります。毎年違う。毎回違う。だからこそ、素材と向き合う時間が必要になる。だからこそ、うまくいった時の喜びはとても大きいのです。

TBS「THE TIME,」で放送されました

こうして完成したそば粉のフレンチクルーラーは、現在ではSOBOKUNIを代表する商品の一つになりました。

その後、TBS朝の情報番組「THE TIME,」のフレンチクルーラー特集で放送していただき、その内容は後日、TBS NEWS DIGでも紹介されました。

TBS NEWS DIGの記事はこちら

私たちにとって嬉しかったのは、テレビで紹介されたこと以上に、「そば粉100%でも、ここまでのお菓子が作れる」という可能性を多くの方に知っていただけたことです。

「そば粉でシュークリームを作れないだろうか。」という一つの挑戦から偶然生まれたフレンチクルーラーが、このような形で多くの方に知っていただけたことを、大変嬉しく思っています。

最後にたどり着いたのは、韃靼そば茶入りのショコラでした

食感が決まった後、最後まで悩んだのは仕上げでした。そのままでも十分美味しい。でも、もう少し満足感が欲しい。そこでたどり着いたのが、自家製チョコレートです。

さらに、そのチョコレートには韃靼そば茶を加えています。チョコレートのコクと韃靼そば茶の香ばしさ、そしてそば粉が持つナッツのような風味が重なり合うことで、軽やかな食感でありながら、しっかりとした満足感のあるフレンチクルーラーになりました。

ドーナツでもない。シュークリームでもない。でも確かにフレンチクルーラー。そして何より、そば粉だからこそ生まれたお菓子なのだと思っています。

現在は学芸大学店限定(催事でも?)販売しています。

現在、このフレンチクルーラーはSOBOKUNI 学芸大学店限定で販売しています。限られた催事やイベントにお持ちすることもありますが、生産数には限界があります。一日に作れる数も限られており、東京の店舗では午前中で売り切れてしまうことも少なくありません。

特定の催事で出しています

立ち上げてからずっとお世話になっている金沢での催事や蕎麦関係のイベントの時にのみ限定でそば粉のフレンチクルーラーを出すことがあります。

出会えたら奇跡のような感覚でお求めください。

 

シフォンケーキ。レモンケーキ。ガトーショコラ。そしてフレンチクルーラー。私たちはこれまで様々なそば粉のお菓子を作ってきましたが、この商品はその中でも特に「そば粉にはまだまだ可能性がある」と感じさせてくれたお菓子です。

もしかすると、そば粉はまだ私たち自身も見つけられていない表現をたくさん持っているのかもしれません。これからも、その可能性を少しずつ形にしていけたらと思っています。

SOBOKUNI 学芸大学店はこちら

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