
一般的なバスクチーズケーキは、市販のクリームチーズと小麦粉で作られます。もちろん、それが悪いわけではありません。美味しいバスクチーズケーキは全国にたくさんあります。
それでも私たちは、市販のクリームチーズを使わず、最初にチーズを手づくりするところから始めます。そして、小麦粉ではなく福井県産在来種そば粉を選びました。
効率だけを考えれば、もっと早く、もっと多く作る方法はいくらでもあります。それでも、この作り方を変えることはありませんでした。理由はとてもシンプルです。私たちが一番美味しいと思えたのが、この作り方だったからです。
チーズを手づくりする理由があります。

このバスクチーズケーキで最も時間をかけているのは、焼く工程ではありません。その前のチーズづくりです。
試作を始めた頃は、市販のクリームチーズを何種類も取り寄せて作っていました。それぞれに個性があり、美味しいものもたくさんありましたが、最後まで「これだ」と思える味にはたどり着けませんでした。
私たちが目指していたのは、濃厚なのに重たくなく、なめらかなのにしっかり満足感のある口どけです。市販のクリームチーズを変えたり、配合を見直したり、焼き方を工夫したり。何度も試作を重ねましたが、どうしても理想には届きませんでした。
「それなら、チーズから作ってみよう。」
その決断から、私たちのバスクチーズケーキづくりは大きく変わりました。手間は何倍にも増えましたが、自分たちでチーズを手づくりするようになって初めて、目指していた濃厚さとなめらかさを両立できるようになったのです。
このバスクチーズケーキの美味しさは、オーブンに入れる前から始まっています。
本場への敬意から、このバスクチーズケーキは生まれました。

このバスクチーズケーキを作るきっかけになったのは、スペイン・バスク地方出身の友人との出会いでした。試作ができるたびに食べてもらい、本場で親しまれているバスクチーズケーキのことを教えてもらいました。焼き色や口どけ、食べたときの印象など、現地ならではの感覚を一つひとつ学びながら、レシピを少しずつ磨いていきました。
私たちが目指したのは、本場をそのまま再現することではありません。その美味しさに敬意を払いながら、福井県産在来種そば粉だからこそ生まれる、新しいバスクチーズケーキをつくることでした。
完成したものを食べた友人は、「バスク地方にはない。でも、もし向こうで売っていたら、私はこれを買う。」と言ってくれました。
本場を知る人にそう言ってもらえたことは、私たちにとって何より嬉しい出来事でした。真似ではなく、そば粉だからこそ生まれる新しい美味しさを目指してきたことは、間違っていなかったのだと感じた瞬間でもあります。
そば粉だからこそ、この美味しさがあります。
「そば粉のチーズケーキ」と聞くと、「ぼそぼそしていそう」「そばの香りが強そう」と思われる方も少なくありません。
でも、実際に召し上がったお客様からは、「本当にそば粉なんですか?」と驚かれることがよくあります。
私たちが使っているのは、福井県産在来種そば粉100%。小麦粉の代用品として使っているのではありません。
在来種そば粉ならではのやさしい香ばしさと奥行きのあるコクは、濃厚なチーズの美味しさを引き立てながら、あと味を驚くほど軽やかにしてくれます。
グルテンフリーだから選ばれるお菓子ではなく、そば粉だから食べたくなるバスクチーズケーキ。それが私たちの目指した美味しさです。
販売当初より、今の方がずっと美味しいです。
販売当初に召し上がってくださった方がいらっしゃるなら、ぜひもう一度味わっていただきたいと思っています。
最初の頃は、とろけるような口どけを大切にしていました。しかし食べるたびに、「もっと濃厚にできる」「もっとなめらかにできる」という課題が見えてきました。
チーズの作り方を見直し、焼き加減を変え、そば粉との配合を調整し、また焼く。その繰り返しを何度も重ね、今の味にたどり着きました。
私たちは、お菓子を完成品とは考えていません。もっと美味しくできると思ったら、また作り直す。その積み重ねが、今のバスクチーズケーキを育てています。
焼き上がった日が、完成ではありません。
このバスクチーズケーキは、焼き上がった瞬間が完成ではありません。
焼きたては、まだみずみずしさが前に出ています。そこからゆっくり時間をかけることで、チーズのコクとそば粉がなじみ、濃厚なのに軽やかな口どけへと変わっていきます。
だから私たちは、焼き上げることをゴールだとは考えていません。
最後にこのバスクチーズケーキを完成させるのは、オーブンではなく、そのあと静かに流れる時間です。お届けする頃が、ちょうど一番美味しい食べ頃になるよう仕上げています。
最後のひと口まで、そば粉を楽しんでいただくために。
このバスクチーズケーキには、小さなそば粉のクッキーを添えています。
まずは、そのまま濃厚なチーズの味わいを楽しんでください。そして半分ほど召し上がったら、クッキーを細かく砕いて上から振りかけてみてください。
サクッという軽やかな食感と、そば粉ならではの香ばしさが加わり、まるでタルトのような味わいへと変わります。
一つのお菓子で二つの美味しさを楽しめるだけでなく、最後のひと口まで、そば粉の魅力を味わっていただきたい。そんな思いから生まれた、小さな工夫です。
だから、一日にたくさんは作れません。

チーズを手づくりし、本場の魅力を学び、納得できるまで何度も試作を重ねる。そして焼き上げたあとも、美味しくなる時間を待ちます。
効率だけを考えれば、もっと早く、もっと多く作ることはできます。
それでも、その方法を選ぶことはありませんでした。
私たちが届けたいのは、「たくさん作れるお菓子」ではなく、「もう一度食べたいと思っていただけるお菓子」だからです。
そのため、一日にご用意できる数は決して多くありません。
それでも、このバスクチーズケーキを目当てに足を運んでくださるお客様がいらっしゃるたびに、この作り方を選んで良かったと、私たち自身が教えていただいています。